【マダミスの作り方】魅力的な事件を考えよう

前の記事までで、テーマとコンセプト、シナリオの概要、プラットフォームも選び、キャラクターについても知識を蓄え、キャラクターが制作できました。

ここで、あらすじの記事で後で考えましょうと言っていた「魅力的な事件」について改めて考えてみましょう。

とはいえ、私も魅力的な事件はなかなか思い浮かばないので……今回は考える手順ではなく、調べた資料や、マダミスにおける重要な点についてまとめた内容になります。

事件ってなんだ?

魅力的な事件の前に、そもそも事件ってなんでしょうか。
Wikipediaを引いてみます。

事件(じけん)とは、

  1. 事柄、事項(広辞苑では1番目に挙げている[1])。
  2. (行政用語・法令用語)事柄・案件のこと。官公庁におけるある種の個別の手続を「事件」と呼び事件番号を付すなどして管理されることがある。住民票の請求、情報公開請求、許可申請、戸籍訂正申立て、損害賠償請求、犯罪捜査など、いずれも事件である。裁判実務上は、訴訟事件の略としても使用される。 → #行政用語・法令用語を参照。
  3. (意外な)できごと、もめごと[1]。争い・犯罪・騒ぎ・事故など、人々の関心をひく出来事[2]。これについては、岩波国語辞典は「人々の話題になるようなものを指すことが多い」との解説文を付している。[3]。 → #もめごとを参照。
Wikipedia – 事件 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%8B%E4%BB%B6#%E3%82%82%E3%82%81%E3%81%94%E3%81%A8

Wikipediaの定義でいくと、3番の「争い・犯罪・騒ぎ・事故など、人々の関心をひく出来事」「人々の話題になるようなものを指すことが多い」というのがマーダーミステリーで扱う事件としてふさわしいでしょう。

事件って何がある?

事件の例として、Wikipediaから、日本の刑法における犯罪類型をみてみましょう。
長いですが、すべて役に立ちそうなので引用します。

個人的法益に対する罪

(財産犯については、個別財産に対する罪と全体財産に対する罪、領得罪毀棄罪とに分類するのが通常である。)

社会的法益に対する罪

国家的法益に対する罪

Wikipedia – 犯罪#日本の刑法における犯罪類型 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8A%AF%E7%BD%AA#%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E5%88%91%E6%B3%95%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E7%8A%AF%E7%BD%AA%E9%A1%9E%E5%9E%8B

これらの一覧をぼーっと眺めているだけでも、幾らでも事件が起こせそうですよね。

最後の「国家的法益に対する罪」は仰々しいですが、たとえば国家を職場や部活動、サークルなど一定の目的のために集まった人々に置き換えれば面白い題材になりそうです。あるいは、世界観をファンタジーにすればそのまま事件として使えるかもしれません。

事件を魅力的にするには?

一覧を見ながら、何か良い題材が浮かんだら。
あるいは、なんとなく思い浮かんだ事件があったら。

次は、事件を魅力的にブラッシュアップする方法を考えてみましょう。

魅力的な謎を作る

すぐに解決できてしまう事件は魅力的ではないですよね。

ケーキが無くなって、犯人捜しをするときに、頬にクリームを付けた人がいたらすぐに事件は解決です。
やはり、すぐに解決できない謎が良いでしょう。

では、謎はどうやって考えたらいいのでしょうか。

フーダニット+α

マーダーミステリーでは投票のシステムがある以上、基本的にはフーダニット(Who done it? 「誰がやった?」)のミステリーになります。

つまり、犯人当てゲームということですね。

では、ここに謎として、フーダニット以外の5W1Hもプラスしてみましょう。

  • When:いつ
  • Where:どこで
  • Who:だれが
  • What:何を
  • Why:なぜ
  • How:どのように

5W1Hはこの6つです。この中で「Who:だれが」は最初から謎になっています。
「What:何を」も事件の根幹なので最初に提示されるでしょう。

「When:いつ」「Where:どこで」「Why:なぜ」「How:どのように」は追加する謎として良さそうです。

では、犯人の思考になって5W1Hをうまくごまかして事件を謎に包んでみましょう。

When:いつ

「When:いつ」が謎の場合、多くは「アリバイトリック」と呼ばれる謎になります。

犯行推定時刻が分かっているならば、その犯行推定時刻に別の場所で目撃されるなど、何らかの事情で絶対に犯行ができないことが立証できれば良いのです。

Where:どこで

「Where:どこで」も謎のひとつです。これは「When:いつ」とも組み合わされます。

他の場所にいたから犯行ができないといったアリバイとも組み合わされますし、あるいは密室のような「入れない場所」といった謎も良いでしょう。

単純に自分は鍵を持っていないから入れなかった、という言い訳もできそうです。

Why:なぜ

動機です。動機がなければ犯罪は起こさないでしょう。

自分には犯行の動機が無かった、というのも疑いを晴らす一つの証拠になりそうです。

とはいえ、マーダーミステリーでは時系列整理や物証を整理した結果、動機が不明瞭なまま投票されることもあるので、動機だけで謎を作るのは犯人の言い訳としては弱いかもしれません。

How:どのように

いわゆるトリック、ハウダニット(How done it?「どうやって?」)です。

たとえば小柄な女性が犯人候補に挙がった際、凶器が重いブロックだった場合、持ち上げられないから犯人ではない、という言い訳が出来るでしょう。しかし実際の凶器は重いブロックではなく……といった犯人が工夫を凝らしたトリックはミステリーの王道ですね。

とはいえ、マーダーミステリーのプレイヤーは推理小説の中の名探偵ではありません。

糸とテープをドアの隙間に通して氷を使って……といったトリックを見破れるプレイヤーは果たして存在するでしょうか。

ハウダニットをマーダーミステリーで使うには、手がかりの提供の仕方などのバランス調整が難しいところでもあります。

キャラクターにとって強い感情がある

謎以外にも、キャラクターにとって強い感情があれば、事件は魅力的になるでしょう。

たとえば、ケーキが誰かに食べられたという事件でも、友人から「昨日家族の誰かが私のケーキ食べちゃったんだよね」と聞かされたのだとしたら、聞いている本人からすればどうでも良いでしょう。

しかし、本人のケーキが食べられたのだとしたら……これでもまだ弱いですね。

では、すごく楽しみにしていたケーキだとしたら。
貧乏で年に1度のご褒美のケーキだとしたら。
限定100個のケーキを8時間並んで買ったとしたら。
あるいは、恋人がはじめて手作りしてプレゼントしてくれたケーキだとしたら。

思い入れが強いほど、事件はキャラクターにとって重いものになります。
キャラクターの感情が大きいほど、プレイヤーも楽しくプレイできるでしょう。

感情が詰まった題材を扱う

たとえばラブレターのような誰かの気持ちが詰まったものがバラバラになっていたら。その事件のあらすじだけで切なさがあります。(自作「ばらばらラブレター置き去り事件」の事件です)

そういった誰かが大事にしているものをモチーフにした事件はプレイヤーの感情を動かすことができ、事件の魅力を上げるでしょう。

ただし、倫理的にタブーすぎると嫌悪感を抱く人もいるので注意してください。
ご飯を粗末にしたり、動物がひどい目に遭うなど、苦手な人が多い題材もあります。

思い切りジャンルを変えてみる

事件といっても、殺人など物騒な犯罪モノに限りません。

たとえば恋人同士の修羅場といったラブコメでも事件です。
呪われた家から出られないといったホラーも事件です。
お仕事モノで、納期が間に合わないといったトラブルも事件です。

事件であれば、マーダーミステリーの枠組みに当てはめれば面白い作品にきっとなるはずです。

「ジャンル 種類」で検索すると、出版社のジャンル一覧が出てきてジャンルを眺めるのに便利です。ぜひ参考にしてみてください。

謎は一つでなくて良い

一つ謎が解けたと思ったら、実は裏にこんな謎が!という展開は楽しいものです。

  • 自分が犯人だと思っていたら実は違った!
  • 事件の犯人を洗っていたら、なぜか全員犯人だった!
  • 犯人は分かったが、記憶が無く、操っている黒幕がいる!

などなど、「実は!」という展開があっても事件が魅力的になります。

ただし、展開が多い分、プレイ時間も長くなります。プレイ時間に応じて展開を詰めるか、あるいはやりたい展開に合わせてプレイ時間を延ばしましょう。

事件にかかわるキャラクターを魅力的にする

キャラクターが魅力的なら、簡単な事件も魅力的に思えます。

事件自体を魅力的にするのはもちろんですが、キャラクターを魅力的に深堀しても良いでしょう。

テーマを魅力的にする

テーマまで戻ると最初に戻りますが……テーマとはプレイした後にプレイヤーに残る感情です。

もちろん事件はテーマに即したものであるべきですし、テーマが魅力的ならきっと事件も魅力的になるはずです。

プレイヤーは情報整理と時系列整理、動機で事件を解く

事件について色々考えてきましたが……
自分がマーダーミステリーをプレイし、事件について解いていく時を思い出してください。

まず真っ先にやることは情報の調査と整理です。キャラクターや物証について集めて整理します。

次に、時系列を整理するでしょう。あるいは集めた情報から、動機を探るかもしれません。

最初は事件の全貌が分からないので調査をして情報を整理する。事件の全体像が分かってきたら、怪しい人の時系列や動機を洗う。
情報の整理、時系列の整理、動機の整理をして、消去法で消していき、残った人が犯人……というのが王道のマーダーミステリーの解き方です。

もちろん、同時に他の自分の目標についても行動しますが、本筋の事件についてはこういう動きをする人たちが多いと思います。

この動きにある程度即して謎が解けるように、あるいはギリギリ解けないようなバランスの謎や事件が必要です。

逆に言えば、マーダーミステリーの謎は動機や時系列を複雑にし、情報をばらけさせれば、最低限満足感のいく謎が出来上がります。

明日以降、時系列や情報を作者が整理しながら作っていく方法を書いていきます。お楽しみに。

マダミスアドカレチャレンジについて

マダミスアドカレチャレンジと題して、マダミスの作り方を12月1日~25日で書けるだけ書いくチャレンジをしています。
チャレンジ終了後、記事は一部非公開にして、pdfの電子書籍+穴埋めフォーマットを付けてBOOTHなどで販売予定です。
クリスマスまでの間、しばしお付き合いください。明日もどうぞお楽しみに。
アドカレへの飛込参加も大歓迎です。お気軽にどうぞ。

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ライター&マーケター。 営業からWebマーケティング、小説連載、マダミス執筆など多岐に渡った経験が強み。現在寝たきりの病人ながら、お仕事募集中です。お問い合わせはページ上部お問合せから。 百合×感情×交錯マーダーミステリー「ばらばらラブレター置き去り事件」 BOOTH版好評販売中