前の記事までで、テーマとコンセプト、シナリオの概要、あらすじも決まり、プラットフォームも選びました。構成についても学びました。
キャラクターについて、前の3つの記事で差別化の仕方、関係性の作り方、バックストーリー、秘密について書きました。
キャラクターについてなかなか書き終わりませんが……大事なので! 頑張って書くので頑張って読んでください。
おさらい:キャラクター創作の7つのカテゴリー
前々回の記事で触れた、キャラクター創作の7つのカテゴリーをおさらいします。
「工学的ストーリー創作入門」の7つのカテゴリーを私がマダミスに置き換えたものです。
- 表向きの顔と性格……キャラクター選択画面で見える姿
- バックストーリー……最初に配られる個別資料に書かれた内容
- 内面の悪魔との葛藤……キャラクターの秘密や葛藤
- ゴールと動機……キャラクターの目標
- 世界観(信念体系や倫理観)……バックストーリー・葛藤・ゴールを読み取ってプレイヤーが決めるプレイ方針
- キャラクターアーク(キャラクターの学びと変化)……議論や調査、投票を経てキャラクターに起こる変化。成長でも悪化でも良い。
- 決断・行動……議論中・投票・アクションフェーズでの決断・行動
1~4については前回までの記事で説明しました。
今日はゴールと動機、世界観について書いていきます。
ゴールと動機……キャラクターの目標
ゴールと動機をマダミスに即して言い換えると、キャラクターの目標です。
キャラクターにとって、目の当たりにした事件を契機に達成したい事柄です。
犯人ならば逃げ切ること、被害者の親友ならば犯人を捕まえることかもしれません。
事件に興味のない火事場泥棒のキャラクターならば出来る限り金銭を集めることかもしれません。
言い換えるならばキャラクターにとっての勝利条件とも言えます。
何をもって「勝利」とするかは……この後説明するキャラクターアークも関わってくるので、後に書きます。ここでは目標に必要な条件について書いていきます。
目標に必要なこと
目標は勝利条件と書きました。マダミスにおいて一番ゲーム要素の強いものが目標かもしれません。
勝利条件であるからには、具体的でないといけません。
たとえば「目標:キャラクターが幸せになる」だけだと、何をもって「キャラクターが幸せと言えるのか?」がプレイヤーには分かりません。何をもってキャラクターが幸せかを考えさせることがテーマのマダミスならこれで構いません。
しかし、幸せについて考えさせるつもりが無いのに、無意識に抽象的な目標になっていてはいけません。
犯人の目標の例
犯人ならば、「犯人だとばれない」が目標になるでしょうか。しかし、議論の流れ上、直接話題には出さないけれどやんわりと他のプレイヤーが犯人だと気づいている場合もあります。
はっきりと達成したか否かが分かりやすい目安を作者の側で決めておきましょう。
たとえば「投票で1票も入らなかったら達成」「投票で最多票にならなければ達成」などです。
犯人を見つける目標の例
犯人以外ならば、多くの目標は「犯人を見つける」でしょう。犯人を見つけたか否かも、議論中に発言が無ければ、心の中で思っていたのか、時間が無くて言いそびれたのか、あるいはエンディング中に理解したのか、判別がつきません。
たとえば「投票で犯人に投票する」など、明確な基準を設けましょう。
火事場泥棒的なキャラクターの目標の例
火事場泥棒的なキャラクターで、「目標:大金を手にして幸せになる」とすれば少し具体的になりました。では、大金とは何円集まれば良いのでしょうか?
よくあるのは、「¥マークのついたカードを〇枚集める」といった表現です。集めるべきカード、カードの枚数が具体的なので、プレイヤーはプレイ方針を決めやすいですね。
目標達成をGMに委ねる
GMがいるマダミスならば、GMの判断に委ねても良いかもしれません。
ただし、GMが判断を迷わないよう、また、GMによってプレイ体験がぶれないようにGMガイドに判定方法は記載すべきです。
たとえば、ゆるい雰囲気のお気楽マダミスを作ったとします。文体も事件もすべてがゆるいのできっとGMも甘く判定するだろう……と思うかもしれません。
しかし、作者として、ゆるく遊んでもらいたいからGMに甘く判定してもらいたいなら、そのようにGMガイドに記載しておいた方が良いでしょう。GMの基準で厳しく判定され、全員が0点になってプレイ後に暗い雰囲気になる……といった可能性も無いとは言えません。
GMと作者の意図が違ったために、プレイヤーが「残念な展開だった」という感想を抱くのは作者としても残念ではないでしょうか?
また、GMの負荷も高くなってしまいます。GMも作者にとっては、自分の作品を遊んでくれる人であり、プレイヤーと変わりない存在です。作者の側で対応できることは作者の側で準備しましょう。
GMが判断に迷わないように、GM向けに判定を詳しく書いておきましょう。
もちろん、ちゃんと場合分けをして判定を書いておけばいいですが、書ききれない場合は、判定の方針をGM向けに書いておけばいいでしょう。
優しく判定してほしいなら、ある程度基準を作った上で、「優しく判定してください」と書けばGMは対応してくれるでしょう。逆に厳密に勝ち負けを競うようなマダミスなら「厳しく判定してください」と添えておくと良いでしょう。
目標の点数
複数目標がある場合、優先順位をつけるために点数を利用しても良いでしょう。
点数に偏りによって、キャラクターにとって大事なことを表現できます。
たとえば、2つの目標を作ってみます。
- 犯人だとバレない(投票で最多得票にならない)
- 自分の妹を探す(投票時、GMに妹の名前を送る)
2つの目標が、両方とも5点であれば、どちらかの目標を捨てねばならない状況になった時、プレイヤーはどちらを捨てるか葛藤するでしょう。状況によって獲得できそうな点数を優先するかもしれません。
「犯人だとバレない」が3点で、「自分の妹を探す」が7点だったらどうでしょうか。
プレイヤーは「このキャラクターは犯人だとバレても良いから妹を探したいんだな」と理解するでしょう。どちらかを選ぶ状況になった場合は、迷わず妹を探す方を優先します。
このように、目標の点数の偏りは、作者にとってキャラクターを表現する手段ともいえます。
また、プレイヤーに目標点数を決めてもらうマダミスもあります。カードなどを用いないクローズ型だと調整が難しそうですが……カードなどを用いるランダム性のあるオープン型ならプレイヤーに目標を決めてもらうのも仕掛けの一つとして面白いでしょう。この場合は、プレイヤーのキャラクター解釈に目標の比重を委ねると言い換えられますね。
プレイヤーは目標に従わない……人もいる
目標を決めたからプレイヤーは従ってくれるだろう……と思ったら大間違いです。
キャラクターのバックストーリーを読んだ結果、キャラ解釈によって目標は捨てられたり、点数を無視してプレイされたりします。
たとえば先ほどの「犯人だとバレない」「自分の妹を探す」が3点・7点の場合でも、キャラクターのバックストーリーから受ける印象が「保身に走るクズ」なら、妹を探さず保身に走るロールプレイをするでしょう。
プレイヤーのキャラ解釈によってロールプレイするマダミスの面白さでもあります。
あくまで、目標はプレイヤーがキャラクターを解釈する補助の一つと考えても良いでしょう。
ただし、100卓立てば5卓ぐらいはキャラクター解釈を優先して目標を無視するプレイヤーがいるかもしれない……という前提のもとマダミスを作りましょうという話です。
テストプレイの段階で目標を無視するプレイヤーがいたなら、キャラクターの印象と目標の齟齬について確認し、調整しましょう。
テストプレイを繰り返して目標を調整しよう
テストプレイで一番変更するのは目標かもしれません。
- 目標の点数を調整する
- 目標が抽象的なので具体的に書き直す
- 目標に至る導線が曖昧なので、具体的な2つの目標に分割する
- 思い切って目標を変更する
- プレイの途中フェーズで目標を足す
などなど……細かく調整して、プレイ体験を洗練させていきましょう。
世界観(信念体系や倫理観)……バックストーリー・葛藤・ゴールを読み取ってプレイヤーが決めるプレイ方針
世界観という脚本用語の定義はいったん置いておいて……ここではプレイヤーが決めるプレイ方針と思ってください。
これまで、キャラクターの表の顔、バックストーリー、秘密や葛藤について書いてきました。
これらにプレイヤーが触れた結果、「こういう方針でプレイしよう!」と思う方針です。
逆をいえば、「こうプレイしてほしい方針」を作者がプレイヤーに示すのがキャラクターの表の顔であり、バックストーリーであり、秘密や葛藤であるのです。
「プレイしてほしい方針」については、キャラクター、タイムライン、情報表、推理導線、情報導線、感情導線などを埋めていってようやく具体的になっていくものです。
具体的にしていく過程を書いていきますので……今後も長くなりますがお楽しみに。
マダミスアドカレチャレンジについて
マダミスアドカレチャレンジと題して、マダミスの作り方を12月1日~25日で書けるだけ書いくチャレンジをしています。
チャレンジ終了後、記事は一部非公開にして、pdfの電子書籍+穴埋めフォーマットを付けてBOOTHなどで販売予定です。
クリスマスまでの間、しばしお付き合いください。明日もどうぞお楽しみに。
アドカレへの飛込参加も大歓迎です。お気軽にどうぞ。
https://adventar.org/calendars/8221