【マダミスの作り方】テーマとコンセプトを決めよう

テーマとコンセプトってなに?

前の記事で、マダミスに必要な成果物が見えてきました。
今日からは成果物に至るまでの下準備を進めていきます。

では、最初にテーマとコンセプトを決めましょう!
……といってもテーマとコンセプトってなんなのでしょう?
突然出てくる横文字って嫌ですよね。

さて、私はストーリー作りにおいて「工学的ストーリー入門」が最高の教科書だと思っています。この本の定義にいったん則って話していきます。今後も度々この本は出てきます。神本です。

工学的ストーリー創作入門 売れる物語を書くために必要な6つの要素 ラリー・ブルックス=著|シカ・マッケンジー=訳 フィルムアート社
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テーマとは?

「工学的ストーリー入門」では、テーマを「ストーリーが意味すること」「いかに読者の心に触れるか」と定義しています。
マダミスに即して言い換えて、テーマを「プレイし終わったときにプレイヤーの心に残る感情」と定義しましょう。

たとえばお笑いコントならテーマは「見た人がめちゃくちゃ笑って楽しくなる」がテーマでしょう。ホラー映画なら「見た人が怖くてうしろを振り返れなくなる」がテーマ。

「めちゃくちゃ笑った!」「つらくて泣きそう」「難解な推理が解けてスッキリした!」など、マダミスで抱く感情は色々ですが、プレイ後にプレイヤーに残る感情がテーマです。

コンセプトとは?

対してコンセプトは「もし〜だとしたら?(What if?)」と定義されています。ストーリーの土台となるアイデアですね。

良いコンセプトWhat if?はさらにWhat if?を呼び、What if?が連鎖していくことでストーリーができていきます。

たとえば映画タイタニックだと、「もし豪華客船が沈んだら?」が最初のコンセプト。「もし恋をした二人の若者が乗っている豪華客船が沈んだら?」という問いが続くか、「もしプロ意識の高い船内楽団が乗っている豪華客船が沈んだら?」という問いが続くかで作品の方向性が変わってきますね。

舞台設定だけでなく、たとえば「ホストが女性恐怖症だったら?」というコンセプトのキャラクター、ヒプノシスマイクの伊弉冉一二三。なぜ女性恐怖症になったのか? なぜホストになったのか? 色々な「書かれるべき物語」を呼びます。

キャラクターのコンセプトついてはこの記事が詳しいのでぜひ一読を。
いいキャラクターは「書かれるべき物語」を呼ぶ|monokaki編集部

キャラクターに関してはまた別の記事で詳しく書きますので、いったん置いておいて。

マダミスはまだ発展途上の創作形態であり、他のジャンルをマダミスに輸入している段階なので、「もし〇〇というジャンルをマダミスで作るなら?」で十分に面白いコンセプトになるでしょう。

もちろん、「もし最高の密室殺人をマダミスで作るなら?」とか「もしプロバビリティの殺人をマダミスで作るなら?」といったミステリーの定石をコンセプトにしても良いです。

テーマとコンセプトの定義

まとめると、

テーマは「プレイし終わったときにプレイヤーの心に残る感情」

コンセプトは「もし〇〇をマダミスで作るなら? (What if?)」

となります。

どうやってテーマとコンセプトを作るの?

では、どうやってテーマとコンセプトを作るのでしょうか?

「アイデアが湧いて仕方がない!」という人も、いったんお付き合いください。

1.テーマとコンセプトを生み出す「感情を動かすものリスト」を作る

誰でも使える簡単で具体的な方法です。ベテランがアイデアに詰まったときにも使えます。

  • 好きなものや、なんらかの感情を抱いているものをとにかく羅列する
  • どこがいいのか、具体的に掘り下げる。

時間はかかりますが確実です。具体的に書いていきますね。

まず、好きなものや感情が動くものを羅列する

好きなものや、好きなものに限らず、感情が動くものを羅列していきましょう。
または、「全人類これが嫌いなわけないだろ!?」というものを羅列しましょう。

好きなものというと照れたり悩んだり考え込んでしまうのですが、「全人類絶対好き」なものなら幾らでも出てきませんか?
「全人類絶対好きなもの」、実は別に全人類絶対好きなわけじゃなくて、単純に自分が大好きなものであることが多いです。

そして、更に言うと「好き」といったプラスの感情でなくても良いです。ホラーとか、怖くて嫌いだけどなぜか見ちゃう、みたいなものでも良いです。

マダミスに限らず映画、小説、漫画、好きな人、推し、忘れられない思い出、テレビ番組、食べ物、好みの店、生活、好きな街、好きな夜明けの瞬間、あるいは大嫌いな深夜の寂しさ、なんでもいいので感情が動くものを書き出してみましょう。

思い浮かばなくなったら、たとえば

  • 本棚に並ぶ本
  • 最近買ったもの
  • スマホに入っているゲームアプリ
  • 小さい頃好きだった本やゲームや遊び
  • 見たことのある映画と、見て見たい映画

などなど……周りを見渡して触れてきた作品を挙げて、その中から全人類が好きなはずのものを書いていきましょう。

とにかく書き出してみれば良いので、まずは100個、100個出せたら200個ぐらい出してみましょう。意外なものを思いつき始めたら楽しいです。

どこが良いの? 深堀する

深堀しましょうといってもどうすればいいか分からないですよね。

  • どのシーンが記憶に残っているか?
  • どういうキャラクターが出てくるのか?
  • どういう関係性なのか?
  • どういう世界観の作品なのか?

など……
5W1Hでいう「What=何を?」「Who=誰を?」を思いつくまま書いてみましょう。思いつかなくなったら次に行きます。

難しければ、

  • 全人類好きなシーンやセリフ
  • 全人類このキャラが好きなはず
  • 全人類この二人の関係は絶対好き
  • 全人類この世界観好きでしょ!?

など、主語を「私」ではなく、「全人類」に変えるとポイントが洗い出しやすくなります。

「何が面白いんだ?」の悪魔に対する武器

このリストは、もちろんテーマやコンセプトの制作に役立ちますし、創作者皆に平等に降りかかる災いである「何が面白いんだ?」の悪魔に対する武器にもなります。「何が面白いんだ?」の悪魔が襲いかかってきたときに、このリストを見直すのです。

作っている作品が面白いかどうかはともかく、目指している「理想の作品」の面白さはリストに載っています。作っている作品が面白くないのなら、理想に少しでも近づければいいのです。面白くない作品を救いはしませんが、道標になって、少なくとも迷子にはなりません。

ちなみに、個人的な体験からすると、何が面白いんだ?と作者が思った作品は、その時点では大抵面白くありません。

でも大丈夫です。いったん全没にするなり、思い切り方向転換したり、展開を付け加えたり、面白くする工夫をすればいいだけです。「何が面白いんだ?」の悪魔は面白くなさを気づかせてくれる最高の相棒でもあるのです。ムカつくので殴りたいですけどね。

リストを眺めてみる

リストを眺めて見たら、自分がどういうものが好きなのか、どういうものに心を動かされるのか分かったと思います。「意外とラブコメ好きなんだな!?」「ホラー苦手なのにこんなに見てて好きなのか!?」など気づきもあるでしょう。

好きな作品や好きなものの、好きなポイントリストは自己分析としても役に立ちますし、参考作品リストとしても使えます。作るのは時間が掛かりますが、一度思い切り時間をかけて作ってみると便利です。

一旦傾向を把握できたら、次回以降は作りたいジャンルに絞って書き出すなど、規模を調整してください。

2.リストを眺めて、テーマを決める

「全人類好きリスト」、もとい「感情を動かすものリスト」が出来上がりました。

こうして「感情を動かすもの」を羅列してみると、マダミスをはじめ、創作物というのは創作物に触れることで、触れた人にある感情を起こさせる「感情装置」ということが分かります。

リストに載っているのは「感情を動かすもの」であって、感情ではありません。

では、改めて、リストを見ながら「プレイし終わったときにプレイヤーの心に残る感情」=テーマを考えてみましょう。

その作品をプレイして、どういう感情になりたい?

作者としてプレイヤーに与えたい感情、というと難しいので、自分がプレイすることを考えましょう。自分がプレイするとしたら、どんな感情になりたいでしょうか?

感情というと難しいかもしれません。
もっと具体的に言うと、どんな感想をツイートしたいですか?

「超くだらなくて笑った!!!」でも良いでしょう。「推理難しくてめちゃくちゃ悩んだけど解けて最高に気持ちよかった!」でも良いでしょう。「にゃんにゃん言う猫RP楽しかった!」でも良いでしょう。感情に貴賎はありません。

「自分がプレイした時に、こういう感情を抱きたい! こういう感想をツイートしたい!」という強い思いを一文にしましょう。

それこそが「プレイし終わったときにプレイヤーの心に残る感情」=テーマです。

たった一つの冴えた感情

重要なのは1つに絞ることです。

もし2つの感情を載せようとしたらどうなるでしょうか。船頭多くして船山に登ると言いますが、まさにそれです。

たとえば「にゃんにゃん猫RPが楽しかった!」と「推理が難しいけど解けて気持ちよかった!」の2つを1つの作品にしたいとします。にゃんにゃん言いながら、難しい推理に没頭できるでしょうか? 難解な情報整理をしているときににゃんにゃん言えるでしょうか?

解決策はあります。主従を決めることです。

「難解な推理」を一番のテーマとするならば、「にゃんにゃん言うRP」は推理を難しくするスパイスになるでしょう。感想としては「にゃんにゃんで情報伝えるの難しかったけど、情報のパーツハマって推理がうまく行った瞬間気持ちよかった!」となるでしょう。面白そうなマダミスですね。ツイートを見た人もやりたくなりそうです。

逆に「にゃんにゃんRP」を一番のテーマとするならば推理パートの他に、にゃんにゃん言い合うだけのRPパートが生まれるかも知れません。プレイヤーの感想は「にゃんにゃん言うの楽しかった! 推理も意外としっかりしてて満足!」となるでしょう。これも面白そうですね。

どちらを一番のテーマにするかで、だいぶ感想が変わりますよね。これを最初に決めると、迷子にならなくなるのです。だからこそ、1つ以外はいったん諦めるのが必要なのです。

3.コンセプトを決める

テーマ=プレイ後に残したい感情は決まりました。

次はコンセプトです。「もし〇〇をマダミスで作るなら?」を考えましょう。

好きなものがあるなら好きなもので作ってみよう

これも、リストを眺めてみましょう。初めて創作をするのなら、一番良く知っているジャンルを選ぶといいです。ベテランの方は気になるジャンルや売れ線のジャンルを意識しても良いですが……まずは自分が予め知識の多いジャンルを選びましょう。

リストを見て一番好きなジャンルがある人はそれを選びましょう。作者の好きなものを詰め込んだ作品はそれだけで楽しいですからね。

でも、どのジャンルもまんべんなく好きだけど、そこまで知識も熱意もないな……という場合もあるでしょう。

大丈夫です。裏技があります。

好きなものが分からない時の裏技

またリストを作るのですが、あなたの人生を書き出しましょうこれまでの人生で時間を使ってきたことを順に書き出すのです。

まず睡眠。食事。学校に行ったり、部活をしたり、移動は徒歩? 満員電車? バイトは何を? 仕事をしているならなんの仕事を? どんな業界でどんな業務を?

たとえばあなたが高校生なら、現代の高校を舞台にしたマダミスって成人済みの大人からするととても魅力的です。「現役高校生がマスク必須のコロナ禍の高校を舞台にマダミスを書いたら?」って聞くと面白そうです。

たとえばあなたは自分を普通のサラリーマンだと思っているかも知れませんが、あなたがいる業界の知識を他の業界の人たちは知りません。「もし印刷会社で起こった殺人事件のマダミスを作るなら?」の問いに、印刷会社で勤めるあなたは「なら紙の配達の運転手がいるし、納期にピリピリしてるDTP担当のお姉さんがいるし、ちょうど印刷見本を取りに来たデザイナーさんがいてもいいな」と詳しく状況が思い浮かぶでしょう。なにか独特の慣習や、印刷機械を使ったトリックも思い浮かぶかもしれません。とっても面白くなりそうじゃないですか?

あなたにとっての常識は、他の人にとっては好奇心の的です。あなたの武器をあなたは認識していませんが、あなたの武器はあなたの生きた時間にあるのです。

コンセプトをテストする

「もし〇〇をマダミスで作るなら?」の〇〇に、好きなことを入れたり、自分の使ってきた時間の多いことを入れたりして、コンセプトをいくつか作ってみましょう。
コンセプトがいくつかできたら、ツイッターでアンケートを取ったり、友人に聞いてみて、反応を見てみましょう。どのコンセプトが刺さるか、作者本人では分からないものです。

少しでも多くの人にプレイしてもらいたい、という人は反応があったコンセプトで作ってみると良いでしょう。最初は思い入れがなくても反応があるとうれしくて思い入れが後からついてきますしね。

もちろん、自分が一番一番自分が思い入れのあるコンセプトで作っても良いでしょう。思い入れや熱意は作品を面白くします。一見気を惹かなくても、プレイした人が「うまく言えないけどとにかくやって!」と言って布教するような作品は良いものです。

類似作がないかリサーチする

コンセプトを最終決定する前に、一回検索してみましょう。
既に似たようなコンセプトの作品があり……しかもその作品が名作の場合は、いったん考え直しましょう。

あなたが既存の作品を超える最高の作品を生み出せる可能性が無いという意味ではありません。

プレイヤーが遊ぶマダミスを選ぶ際、あなたが今から作るマダミスと、もう沢山の人にプレイされて評判の良い名作を同じ土台で比べた時に、プレイヤーはどうしても名作を選びがちなのです。

全く違うコンセプトに変更するのも手です。でも、どうしても思い入れがあるコンセプトかもしれません。
大丈夫です。解決策はあります。
既存の名作が「〇〇マダミス」なら、「〇〇×△△マダミス」として違う要素を掛け算するのです。売り文句の解像度が高くなり、プレイヤーに選ばれる要素が増えます。

念のため言っておくと、コンセプトが似ていると、内容が全く違うのにもかかわらず「被りじゃん!」「パクりじゃん!」ということをプレイもせずに言ってくる輩はいます。
これはどこにでも発生する荒らしなので、気にしないでおきましょう。

テーマとコンセプトはマダミスを選ぶ際のすべて

こうして、テーマとコンセプトができました。

テーマとコンセプトは、プレイヤーが遊ぶマダミスを選ぶときに見える情報の全てでもあります。

タイトルやサムネイル画像、あらすじから伝わってくるコンセプトと、「切なかった!」とか「推理難しかった!」といった感想の口コミから垣間見えるテーマを見て、プレイヤーは次に遊ぶマダミスを決めるでしょう。

ネタバレが厳禁のマダミスにとって、プレイしてもらえるかどうかはコンセプトとテーマにかかっているのです。

なので、コンセプトとテーマができたら、ほぼほぼマダミスが完成したと言っても過言ではありません。やりましたね。

マダミスアドカレチャレンジについて

マダミスアドカレチャレンジと題して、マダミスの作り方を12月1日~25日で書けるだけ書いくチャレンジをしています。
チャレンジ終了後、記事は一部非公開にして、pdfの電子書籍+穴埋めフォーマットを付けてBOOTHなどで販売予定です。
クリスマスまでの間、しばしお付き合いください。明日もどうぞお楽しみに。

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ライター&マーケター。 営業からWebマーケティング、小説連載、マダミス執筆など多岐に渡った経験が強み。現在寝たきりの病人ながら、お仕事募集中です。お問い合わせはページ上部お問合せから。 百合×感情×交錯マーダーミステリー「ばらばらラブレター置き去り事件」 BOOTH版好評販売中