前の記事までで、テーマとコンセプト、シナリオの概要、あらすじも決まり、プラットフォームも選びました。
では、この記事ではマダミスの構成を考えていきましょう。
なお、この記事以降は、今後書くキャラクターの作り方などの内容を読んでから書き始めた方が書きやすいと思います。
まずいったん知識を入れる段階なので、分かりづらい内容が続きますが……知識が増えると書ける内容が増えて楽しいので、ぜひお付き合いください。
ベテランの作家さんにも「なるほど」という点があればうれしいです。
マダミスの構成とは?
構成とは、物語の組み立て方です。エピソードやシーン、情報を組み合わせる作業です。
情報を入れる箱として、小説や漫画ではよく「起承転結」や「序破急」が使われます。
起承転結の書き方としては、一番盛り上がるところ=テーマが一番伝わるところを「転」として最初に考え、書き出しを「起」、書き出しから「転」に向けての盛り上げや情報の追加を「承」、最後に「結」を置いて完成です。
ボリュームは起承転結がすべて同量ではなく、起起承承承転転結ぐらいの割合です。長方形を書いて、2×4に分割して、8ブロックに起起承承承転転結と書き、埋めていく方法を「箱書き」と呼びます。
箱書きとは?
せっかくなので箱書きについて説明します。便利なので、小説や脚本を書く人以外も使ってみてください。例として太宰治の走れメロスを箱書きにしてみます。太宰治が箱書きを使っていたかは定かではありませんが、箱書きに当てはめて書いていくとどうなるか……という例です。
1.まず、テーマを「転」に置く
2.テーマを伝えるエピソードを「転」に書く
3.「転」のエピソードに繋がるエピソードを「起」に置く
4.起と転をつなぐエピソードを「承」に埋める
5.「結」に良い感じの締めのエピソードを入れる
6.それぞれの箱の中身を更に「起承転結」でエピソード化していく
箱書きができたら、さらに一つの箱の中身を「起承転結」で細かくしていきましょう。繰り返していく内に、おおまかな情報がエピソードになり、セリフになっていくでしょう。
箱の中でも起承転結を作り、箱ひとつひとつに見せ場を作ることで、読者や視聴者を飽きさせず物語に没頭させられます。
この辺りは柏田道夫先生の「シナリオの書き方」が詳しいのでぜひ読んでください。シナリオ初心者にも分かりやすい本です。映画やドラマのシナリオがメインなので、マダミスに当てはめるには応用が必要ですが、応用についてはこの記事で説明していきます。
シナリオの書き方―映画・TV・コミックからゲームまでの創作実践講座(柏田道夫・映人社)
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構成とは情報やエピソードを入れる「箱」
箱書きについて説明したのは、構成が情報やエピソードを入れる「箱」というイメージをつかんでもらうためです。イメージはつかめたでしょうか?
マダミスに「起承転結」は使えるのか?
さて。
映画や小説、読み切り漫画にとっては「起起承承承転転結」は良いバランスですが(昨今は起転転転転転転結といった展開の速い物語が増えているとか、異論は多々ありますが)、マダミスにとっても情報を入れる「箱」として良いバランスなのでしょうか?
私は否だと思います。
ベテランの作家さんでも、プロットを書くのに「起承転結」にまとめようとして途方に暮れたことがあると思います。
これは、「起承転結」がマダミスの情報を入れる箱として合っていないから起承転結に当てはめられないのです。序破急も同様です。
では、マダミスの構成はどのように書けばいいのでしょうか? 起承転結や序破急のような黄金構成はあるのでしょうか?
マダミスを構成する箱の形=フェーズ
小説や漫画、映画は一つの箱が「シーケンス(シーンやエピソードの塊)」で出来ています。
しかし、マダミスでは決まったシーンがあるのは読み合わせぐらいですよね。
代わりに、マダミスには議論や調査などがあります。
ここでは、マダミスを構成する箱の形を「フェーズ」と定義して考えてみます。
小説や漫画と箱の形と中身は違いますが、マダミスも同じく箱の組み合わせ=構成でマダミスはできています。パズルみたいなものですね。
フェーズにはどんなものがあるの?
まず、フェーズを一覧にしてみましょう。
- 共通情報……オープニング、エンディング、キャラクター選択、追加情報の読み合わせなど。
- 個別情報……個別資料読み込み、追加情報資料の配布など。
- 議論・密談
- 推理発表
- 調査……カードなど手がかりの取得。
- 投票……情報や推理の結果、目的に応じて決断する。
- アクションフェーズ……自由に発言・行動する。
これら全てのフェーズがあるマダミスもあれば、ないマダミスもあります。
推理発表やアクションフェーズが無いマダミスもあります。議論や密談が複数回あるマダミスもあります。作品によります。
フェーズの組み合わせは様々ですが、主にこの7つのフェーズでマダミスはできています。
様々なフェーズの組み合わせが可能なので……小説や漫画で使われる起承転結や序破急には簡単には当てはめられないのが分かりますよね。
情報のやり取りゲームとしてのマダミス
ここで、マダミスを「情報のやりとりゲーム」として捉えてみましょう。フェーズは情報を入れる箱です。
マダミスで行われるフェーズごとに、どのように情報を得て、やり取りするかをいったん整理してみます。
- 共通情報……プレイヤー全員が共通認識を持つ。
- 個別情報……プレイヤー一人しか知らない個別の情報を得る。
- 議論・密談……他プレイヤーから情報を収集しつつ、自分の情報を与える。嘘も混じる。
- 推理発表……他プレイヤーの情報を得る。自分の情報を与える。嘘も混じる。
- 調査……情報をランダムに得る。
情報を得るフェーズとしてはこれら5つのフェーズがあります。投票やアクションフェーズは、これら5つのフェーズで得た情報の結果、プレイヤーが判断し行動するフェーズです。
作者がプレイヤーに与える情報
情報を「作者がプレイヤーAに与える情報」として整理してみましょう。
- 共通情報……全プレイヤーに与える情報
- 個別情報……必ずプレイヤーAに与える情報
- 調査……ランダムに与える情報(どのプレイヤーに与えられるか分からない)
- 議論・密談・推理発表……他のプレイヤーを通して与える情報。嘘やブラフが混じり、伝えるかどうかはプレイヤーの判断なので確実に伝わるとは限らない。
- 推理……作者が直接プレイヤーAに与える訳ではないが、情報を読み解けば分かる新しい情報。誤解もある。
マダミスとは、プレイヤーにストーリーを作る材料として、作者が情報を渡すためのものとも言えます。
そうです。マダミスは「プレイヤーが物語を作る遊び」とよく言いますが、裏を返せば作者は物語は作らないのです。あくまで作者はプレイヤーが物語を作るための手がかり、情報を渡すだけなのです。
そして、その情報をどう渡せば良いか、の手段が資料や情報カードという訳です。
情報の出し方によって難易度や面白さが変わる
情報の出し方によって難易度が変わります。
たとえば、全てのフェーズを共通情報の読み合わせにしたら、事件の内容も真相もすべて伝わりますが、それはマダミスではなく演劇になります。
最低限、共通情報と個人しか知らない個別情報がマダミスには必要です。
運要素を入れたければカードなどで手がかりを探す「調査」を入れると良いでしょう。
さらにフェーズごとに調査するカードを絞れば、与える情報を調整できます。
あるキャラクターには直接知らせたくない情報は、他のキャラクターに知らせておいて伝聞で伝わるようにするか、他の情報を組み合わせて推理したら分かるようにすると良いでしょう。
議論・密談・推理発表でプレイヤーが発言する内容もある程度コントロールできます。
どのキャラクターにどの情報を知らせてどの情報を知らせないか、また、いつどのフェーズで知らせるのか。この組み合わせがマダミス制作の面白いところです。
もちろん、プレイヤーによっては作者の思惑通りにいかないプレイをされる方もいて、それもまた面白いものです。
まとめ
- フェーズ……情報を入れるための箱、マダミスの構成要素
- フェーズは7つの種類があり、作者が自由に組み合わせて良い
- フェーズの種類によって、作者がプレイヤーに情報を与える手段が変わる
- フェーズの使い分けによって難易度や面白さも変わる
- マダミスとは作者が与えた情報を使ってプレイヤーが物語を作っていく遊び
感情曲線について知ろう
さて、マダミスを構成する要素であるフェーズと、フェーズごとに作者がプレイヤーに与える情報については分かりました。
では、フェーズを組み合わせて、与える情報を入れていけば構成ができるのでしょうか。
プレイ時間に沿ってフェーズを組み合わせて情報を羅列すれば分かりやすくはなります。構成ができたとも言えます。
ただ、どうにも起伏がありません。
そうです。時間軸というx軸しか存在しないからですね。
せっかく並べるならy軸も使いましょう。x軸がプレイ時間を表すなら、y軸はプレイヤーの感情を表します。
新海誠監督の感情曲線のツイートを見たことがあるかも知れません。これです。
波が大きければ大きいほどプレイヤーは感情を揺さぶられます。
必ずしもフェーズを波状に配置する必要はありません。
スプレッドシートやエクセルで情報を整理している時に波状に配置するのは大変です。
ただし、脳内ではぜひ波を意識して考えてみてください。
視覚的に波状に配置して見たい人もいるでしょう。アナログですが、付箋を使って波状に配置する人もいます。また、Canvaなどホワイトボードアプリなどを使って波状に配置する人もいます。
マダミスにおいて、感情曲線を考えるときに一番注意しなければならないのは、プレイヤー全員が共通する感情曲線を描く訳では無いということです。
映画や漫画や小説ならば、「視聴者」「読者」の一意の視点があります。しかし、マダミスはプレイヤーがキャラクターに扮して、そのキャラクターの視点からストーリーを作ります。キャラクターそれぞれに感情曲線は必要なのです。
(漫画や映画や小説などでもキャラクターごとに感情曲線を作る人はいます。しかし、マダミスでは「必須」なのです)
よく「キャラクターのバランスが悪い」という感想を見かけるかもしれません。
テストプレイでテストプレイヤーに言われて、どう解決したら良いかわからないかも知れません。
そんな時、キャラクターごとの情報を整理し、感情曲線を書いてみましょう。1キャラクターだけ、感情曲線が平坦かも知れません。
原因が分かれば、そのキャラクターの感情に起伏ができるよう調節するか、思い切ってNPCにするのもありです。
さて、マダミスにおけるフェーズ(=情報を与える箱)を並べれば構成ができ、箱の中に情報を入れていく方法は分かりました。
できれば感情の起伏の波=感情曲線を描いたほうが良いこともわかりました。
ここまでは知識です。どうやってフェーズを並べて、構成を作ればいいのか? どんな情報を入れればいいのか? どこに、どんな感情の起伏を入れればいいのか?
それは、キャラクターの作り方の知識が関わってきます。
次回以降の記事をお楽しみに。
マダミスアドカレチャレンジについて
マダミスアドカレチャレンジと題して、マダミスの作り方を12月1日~25日で書けるだけ書いくチャレンジをしています。
チャレンジ終了後、記事は一部非公開にして、pdfの電子書籍+穴埋めフォーマットを付けてBOOTHなどで販売予定です。
クリスマスまでの間、しばしお付き合いください。明日もどうぞお楽しみに。